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昔の読書録 『天使の屍』『慟哭』『プリズム』『乱反射』

角川文庫 『天使の屍』 ……が、本棚から出てきた。
パラパラとめくってみて、大体の話は覚えてるなあ、とは思ったが、
そういえば映画にもなっていたっけ、 え? これ、貫井徳郎だったんだ
私にとって、貫井徳郎叙述トリックの人である。
それ以外を書いているとは知らなかった。 ←ミステリー作家を捕まえてそれは失礼だぞ。

慟哭』(創元推理文庫)は悪くなかったと思う。
貫井徳郎をはじめて意識して読んだのが、これだったからかもしれないが、
叙述トリックにはしっかり引っかかったし、どんでん返しにもなっていた。
殺された子供の頬に触れる父親の描写もすごいと思ったし、
何よりも一番最後の一文が、私にとっては最大のどんでん返しだったと思う、こんな推理小説があるのだ、と。
どうでもよかった叙述トリックが、最後の一文で文学になった。

プリズム』(創元推理文庫)に関しては、
私は教師が嫌いなので―――というか、教師が人格者であることは、
不特定多数の職業に従事する人たちが人格者である確率よりも低いと思っているので、
「まあ、そんなもんよね」的な感想をずっと持ちながら読んでいた。
書き方がわざとらしく「藪の中」みたいにしてあって、
こういう記述の仕方もあるかもしれないが、正統派とはいえないな、と、少し残念。
この小説の事件や犯罪に興味を持てなかったからかも。

乱反射』(朝日文庫)、
プリズムと一緒に購入した気がする。光関係特集みたいな、マイ企画で。
たしか軽微なマナー違反やサボリが、重ね合わさって子供を事故死させてしまう話だった。
乱反射というより、ドミノじゃね? と思う。


そういうわけで、出掛けに手に取った『天使の屍』だ。
上記3作とこれが違うのは、貫井徳郎という小説家を意識しないうちに読んでいたことである。

中学生が何人も自殺する話だが、読んだ時に自分の子供が中学生になるイメージを持っていなかったから、
その世代の親の苦悩など想像することもできず、単なる小説の設定のひとつとして、
ごく普通に犯人探しを考え―――比較的早めに真犯人と犯行動機に思い当たった。
            ……子供の論理、子供の犯罪は、私にとって推測しやすかったのか、根底が単純なのか。
ネタは悪くなかったと思うが、最後の取ってつけたような主人公(自殺した子供の父親)の
「私だけは知っているけど、公表しないで胸に秘めておく」 という自己満足的結末が嫌いだ。

そもそも、「中学生の論理」で深く考えないからこそ至ってしまった犯行の動機が、
小説の最大の謎のポイントになっているのに、
(小説の収まりを良くするためとはいえ)どうして生き残りの中学生に、中年男みたいな行動をとらせるかな。
ラスト(1年後)にいいこと探しみたいなのをくっつけたのも、この小説の価値を下げてしまったな、と思った。
最後に余計なものをつけて失敗するという、『慟哭』の逆パターンかと。

読んでるときは面白いのだが、後半からラストが(小説として)息切れするので、
貫井作品を誰かに推薦したことはない。


まあ、でも、『慟哭』が一番いいかなあ。