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読書録『凶悪―ある死刑囚の告発―』

新潮社文庫 新潮45編集部編 『凶悪―ある死刑囚の告発―』 読了。

コインを準備するためにキオスクや駅中の書店で文庫本を買うのだが、
これもそんな小銭文庫(正確には千円札文庫)の一冊。
雑誌記者が獄中の死刑囚との限られた面会や手紙のやり取りで、
明るみに出ていなかった保険金殺人を炙り出すノンフィクションで、
小説ではなかった。

事件がwikiに載っていた。
執筆時に週刊新潮編集長だった著者はこちら。

ノンフィクションとしては文句なしなのと、
たぶん雑誌に掲載された文章としては文句なしだろうと思うので、
文庫本形式での発表としてはどうよ、という限定条件の上での感想を書く。

まず【第1章】~【第11章】があり、その後にいったん【あとがき】、
文庫版が発行される時間の遅れの間に、裁判その他が進んだため、
文庫版書下ろしの【最終章】がついていた。
その後【文庫版のあとがき】が再びあって、そのあとに【解説】と。

最終章まで含めて、経過をまとめる書き方が、同じ表現で複数回出てくる。
フィクションの小説ならそれが水増し行為のように読めるが、
週刊誌の掲載と考えると必要なまとめだろう。
文庫本なので、半数くらいでよかったかな、とは思った。

ノンフィクションであり事実を確認しながら書き綴っているにもかかわらず、
著者が自分の立ち居地を何度も見直す様子が見て取れる。
不確実なことはいわない、後藤(告発を行っている死刑囚)に肩入れしつつも、
後藤の犯罪自体は許す気配を微塵も見せない(ように書く)、
警察に対する不満は多々あるだろうに、警察を攻撃しない、弾劾しない、

なお、本文は宮本太一(編集長)が書いているのだが、
時折文庫本であることを思い出すのか、妙に文学的な単語が出てきたりして、
ノンフィクションモードで読んでいるときに邪魔になった。
特に最終章でそれが目立ったところを観ると、現役ジャーナリストを引退したからかな、と、思う。

一方、解説は対ロの外交官だった、佐藤優が書いている。
外務省なら文系なんだろうと思うが、分析・分類しつつ文章をまとめていく様子が
めっちゃ理学部みたいな記述で、書かれていることとはまったく別に、(文体が)面白かった。