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読書録 『優子』:面白かったからこそ突っ込んでみる(笑)

集英社文庫 乙一 『夏と花火と私の死体』 に同録の 『優子』

短編だが、これもネタ的には面白かった。

全篇通じて、虚無への供物とか、乱歩や横溝とか........ 
             の、“退廃”“耽美”“負の運命”的な気配が広がってる。

最後の医者との会話に謎解きを全部押し付けちゃうのはいただけないが、
そんなことはほとんどの感想で言われてるし、作者もわかってるんじゃないかと思う。

会話の中で「奥様」を取り違えるトリックも効いているし、それが悲劇につながる流れも無理がない。
これは、この手の時代 (ちょっとだけ昔) 小説としてはすごいことだと思う。

横溝作品などでたまにあることだが、登場人物たちの感じている感動や盛り上がりに、
自分が読者としてまったくついていけないことがある。
古い家の風習の重みや、田舎の地域社会、歴史の因果応報などに根拠をおく感動についてだが、
その辺は、作者の生きた時代とは時代が違うので、感動のきっかけが違ってしまっても仕方ない、とも思う。

短編なのが功を奏しているのかもしれないが、『優子』はそのあたりを軽くクリアしている。
(このままでも悪くはないと思うけど)もう少し分量を膨らまして、書き込んでたら
最近あまりない「綺麗で悲しい本格推理」になっていただろう。

しかし、しかし、しかし!  ベラドンナの枝を持った子供って.... あーた.....
.
ベラドンナって草……だよ?イメージ 1  
    (行き倒れているうちに乾くって)
  自生地はヨーロッパだよ?
      (昔の日本の田舎でどうやって手に入れたんだ?)
    毒の成分は根にあるんだよ? 
        (花や実は短期間だし、
         その辺で掘り起こした根を食べたのか?)
.
                ((拾った画像はダヤンの魔女ね ⇒
.
そもそも、ベラドンナは毒薬および消化器潰瘍の薬であって、
そのまま食っても幻覚作用はほっとんどないぞ? 
確かにスコポラミンも成分的には入ってなくはないけど、
そんなに大量に食ったら先にアトロピンで死んでるって....orz
.
幻覚見せたいならむしろ、似たような植物で日本にも自生するハシリドコロあたりでしょう....


中世毒薬史における、ジギタリスと双璧をなす有名毒薬の名を使いたかったのかもしれないが、
物語のメイン部分をこの薬に頼ってしまうのは、いただけませんでした。

(注)
 一般的には、読み飛ばせるのかもしれない。
 ゼブラも一部薬草を除く植物知識はあまりない。

 が、世の中にはこの植物名を冠するアレルギー体質の人間がおりまして。
 ベラドンナアルカロイド系……と言って、私も硝酸アトロピンやロートコンがダメです。
 メジャーなところでは、正露丸パブロンパンシロンに含有されております。

う...... お薬話になっちゃった(苦笑)