美学と力学
研究所から駅まで、シャトルバスが往復している。
普段は歩く人もいるが、土砂降りの時や終バスの時は、大勢の人がバスを利用しようとし、
その結果、乗り切れずに取り残されてしまう人が出る。
だから並ぶわけではないけれど、先にバス停に来た人から乗るという習慣ができていて、
「じゃあ、今日はダイエットのために歩くか」、という人が(先に来ていても)辞退したり、
女性や高齢者(再雇用の人や偉い人)が優先的に乗せてもらえたり、する。
さて……先週、終バスの時間に強い雨が降りはじめ、大勢の人がバス停に集まった。
バスが来る直前の時間になって、会社でいうなら重役クラスの人 (以下さんとする) が来た。
年齢も上の人だから、当然、私たちはさんに先に乗るように勧めようと思っていた(と、思う。)
が、バスが来る直前、彼はふっと、建物の中に戻ってしまった。
何か忘れものかな? と、少し気になったが、時間になったので、我々が乗り込んだバスは出てしまった。
ゲートを出るあたりで研究所を振り返ると、
さんがまた出てきて、乗り切れなかった人たちと歩き出したところだった。
何のことはない、後から来たのに自分が乗るのは悪いと思ったのだろう、
で、自分が乗るのを断ったところで、
重役を差し置いて自分が乗ってしまった人に罪悪感を感じさせるのが不本意だったのだろう。
偉くなる前の頃から知っているが、やり手のくせに、そういう心遣いの人でもあるんだよな。
電車の中で、松葉杖の人や高齢者に席を譲る時、口に出さずに(用があるふりをして)席を立つ人がいる。
シャイで会話の苦手な人や他人と関わりたくない人が、スマートに席を譲るテクニックだと思う。
他国からの観光客や、日本に住む外国人は、それは日本人の美学なんだよ、と言う。
美学って言えば美学だけどね、口に出してもいいんじゃないか? と、外国育ちの日本人である私は思う。
でも、まわりに不快感も罪悪感も与えないように、黙って少しだけ動いたさんは、Coolだな、と思った。
バスの中で、一緒に振り返って気付いた同僚(ヨーロピアン)と、
. 「He is Cool」
. 「It's cold Today. Yes, he is so cool」 ってな会話をした。
寒い雨の中、Coolなさんに感謝します。
話は全く変わって、
指の骨折のために右手を固めていたギブスがとれてしばらくしたのだが、
固定していた後の指~手首が自在には動かないので、リハビリ中である。
手が固められていた時も、思わぬところで苦労したが、
外してからも、「うん、人の動きはちゃんと力学法則に従っているんだよ」 と、実感する。
シンプルなところで、右手では体をうまく支えられない。
骨折したところは指である。固めていたのは手首まで。
今は指を使うことも、大抵できるのだが、まだ、前腕と手首の角度が直角に曲がらない。
80度くらいまでかな。
すると、どうなるか。
通常、①のように前腕と上腕をまっすぐにのばして体重をかけるから、
上腕にかかる力(青矢印)は、まっすぐ掌から床に伝わり、しっかりと体を支えられる。
しかし、掌と前腕が直角にできないと、②のように肘が曲がって、力の方向が変わることになり、
青矢印は前腕の方向と、それと直角方向であるひじを曲げる方向にベクトル分解される。
掌は滑るわ、肘を曲げる方向に力がかかってくるわ、で、
結局もっとつらい③の体勢にされてしまう。
. (ひじが曲がれば曲がるほど、肘にかかる力が多くなる状態だ)
手首が90度まで曲がらないというだけで、上半身全体がコケるのだ。
上腕、前腕込みで手首の所からまっすぐにして、掌と床の摩擦力で耐えろっ、と思うかもしれないが、
そうなると肩の所で力の無駄が生じることになる。
良くわからない修行をしている感じになって、やっぱり辛い。
やっぱり力は大きさだけでなく、向きが大事だよな~と、思う。
いつぞやコニーさんが、ピアノを弾くときの姿勢と力の入り方、指の動き方を論じてらしたが、
ピアノのようなデリケートなものだったら、もっと効果が大きいんだろうな。
いや、それより、指を骨折したりしたらピアニストは大騒ぎか
またまた別の話。
先日は某ベンチャー企業に誘われて、某中堅企業の分析室に日帰り出張でお邪魔してきたのだが、
そこに元〇〇大学教授の先生が顧問の立場でいらした。
私は知らない名前だったが、分野が違うと有名教授でも知らない可能性もあるし、
私学とは言ってもそれなりにいい大学の教授だった人なら、普通にディスカッションができると思っていた。
が……。
「は????」 の連続だった。
思いっきり上から目線で良くわからない圧力をかけてくる。
. ……ああ、圧力ってのも、力学的には面を押す力だが。
とにかく、名刺(←国立研究所のやつ)を渡した途端、
「官僚が、国立研究所は高学歴者の失業措置に作ったものだから、研究は何も期待してないと言っていた」
仕事を説明する時もまず、
「貴方たち顕微鏡屋は、自分の仕事がなくなると思って私を排除するが……」
「××教授(●●学界の第一人者)は知識がなくてダメだ」
「◎◎教授の仕事はもう私がやって終わっているが、学会はそれが悔しいからは認めない」
研究の話からどんどんずれて言って、
「教授会に出たことがない」
「学会賞を出すというから、めんどくさくて学会を辞めた」
「理工学部でも工学部でもない(経済学部所属??)から、同業者と付き合わなくて済む」
. 何を思い込んでいるのか知らないが私達は顕微鏡屋ではないし、
. 今は国立研究所ってのもないんだが。
で、極めつけが、「科研費なんてくだらない物に応募したことがない」
科研費をとったことがないのを威張る人はたまにいるのだが、
. (私の研究は進みすぎていて理解されない、という若手研究員は結構いる。
. で、1,2%は本当に進みすぎなので、後に大化けする。)
定年過ぎて、科研費を取ったことがない事を威張れる人を見たことはない。
. (巨大プロジェクトに巻き込まれて、自分の科研費を取る暇がなかった、と“言う”人はいる。
. それが本当の場合は、プロジェクトメンバーとして検索に引っかかる。)
訪問先の某中堅企業の社員の人がすまなそうにしていたので、
「豪快な方ですね」 (←大人のコメント) と、だけ言っておいたが、
どうしたんだ、あの人。
松本正張の描く大学人のようである。実際にいるんだな~
さんと、同世代くらいだろうけど、ああいう美学のない人とは付き合いたくないな。
普段は歩く人もいるが、土砂降りの時や終バスの時は、大勢の人がバスを利用しようとし、
その結果、乗り切れずに取り残されてしまう人が出る。
だから並ぶわけではないけれど、先にバス停に来た人から乗るという習慣ができていて、
「じゃあ、今日はダイエットのために歩くか」、という人が(先に来ていても)辞退したり、
女性や高齢者(再雇用の人や偉い人)が優先的に乗せてもらえたり、する。
さて……先週、終バスの時間に強い雨が降りはじめ、大勢の人がバス停に集まった。
バスが来る直前の時間になって、会社でいうなら重役クラスの人 (以下さんとする) が来た。
年齢も上の人だから、当然、私たちはさんに先に乗るように勧めようと思っていた(と、思う。)
が、バスが来る直前、彼はふっと、建物の中に戻ってしまった。
何か忘れものかな? と、少し気になったが、時間になったので、我々が乗り込んだバスは出てしまった。
ゲートを出るあたりで研究所を振り返ると、
さんがまた出てきて、乗り切れなかった人たちと歩き出したところだった。
何のことはない、後から来たのに自分が乗るのは悪いと思ったのだろう、
で、自分が乗るのを断ったところで、
重役を差し置いて自分が乗ってしまった人に罪悪感を感じさせるのが不本意だったのだろう。
偉くなる前の頃から知っているが、やり手のくせに、そういう心遣いの人でもあるんだよな。
電車の中で、松葉杖の人や高齢者に席を譲る時、口に出さずに(用があるふりをして)席を立つ人がいる。
シャイで会話の苦手な人や他人と関わりたくない人が、スマートに席を譲るテクニックだと思う。
他国からの観光客や、日本に住む外国人は、それは日本人の美学なんだよ、と言う。
美学って言えば美学だけどね、口に出してもいいんじゃないか? と、外国育ちの日本人である私は思う。
でも、まわりに不快感も罪悪感も与えないように、黙って少しだけ動いたさんは、Coolだな、と思った。
バスの中で、一緒に振り返って気付いた同僚(ヨーロピアン)と、
. 「He is Cool」
. 「It's cold Today. Yes, he is so cool」 ってな会話をした。
寒い雨の中、Coolなさんに感謝します。
話は全く変わって、
指の骨折のために右手を固めていたギブスがとれてしばらくしたのだが、
固定していた後の指~手首が自在には動かないので、リハビリ中である。
手が固められていた時も、思わぬところで苦労したが、
外してからも、「うん、人の動きはちゃんと力学法則に従っているんだよ」 と、実感する。
シンプルなところで、右手では体をうまく支えられない。
骨折したところは指である。固めていたのは手首まで。
今は指を使うことも、大抵できるのだが、まだ、前腕と手首の角度が直角に曲がらない。
80度くらいまでかな。
すると、どうなるか。
通常、①のように前腕と上腕をまっすぐにのばして体重をかけるから、
上腕にかかる力(青矢印)は、まっすぐ掌から床に伝わり、しっかりと体を支えられる。
しかし、掌と前腕が直角にできないと、②のように肘が曲がって、力の方向が変わることになり、
青矢印は前腕の方向と、それと直角方向であるひじを曲げる方向にベクトル分解される。
掌は滑るわ、肘を曲げる方向に力がかかってくるわ、で、
結局もっとつらい③の体勢にされてしまう。
. (ひじが曲がれば曲がるほど、肘にかかる力が多くなる状態だ)
手首が90度まで曲がらないというだけで、上半身全体がコケるのだ。
上腕、前腕込みで手首の所からまっすぐにして、掌と床の摩擦力で耐えろっ、と思うかもしれないが、
そうなると肩の所で力の無駄が生じることになる。
良くわからない修行をしている感じになって、やっぱり辛い。
やっぱり力は大きさだけでなく、向きが大事だよな~と、思う。
いつぞやコニーさんが、ピアノを弾くときの姿勢と力の入り方、指の動き方を論じてらしたが、
ピアノのようなデリケートなものだったら、もっと効果が大きいんだろうな。
いや、それより、指を骨折したりしたらピアニストは大騒ぎか
またまた別の話。
先日は某ベンチャー企業に誘われて、某中堅企業の分析室に日帰り出張でお邪魔してきたのだが、
そこに元〇〇大学教授の先生が顧問の立場でいらした。
私は知らない名前だったが、分野が違うと有名教授でも知らない可能性もあるし、
私学とは言ってもそれなりにいい大学の教授だった人なら、普通にディスカッションができると思っていた。
が……。
「は????」 の連続だった。
思いっきり上から目線で良くわからない圧力をかけてくる。
. ……ああ、圧力ってのも、力学的には面を押す力だが。
とにかく、名刺(←国立研究所のやつ)を渡した途端、
「官僚が、国立研究所は高学歴者の失業措置に作ったものだから、研究は何も期待してないと言っていた」
仕事を説明する時もまず、
「貴方たち顕微鏡屋は、自分の仕事がなくなると思って私を排除するが……」
「××教授(●●学界の第一人者)は知識がなくてダメだ」
「◎◎教授の仕事はもう私がやって終わっているが、学会はそれが悔しいからは認めない」
研究の話からどんどんずれて言って、
「教授会に出たことがない」
「学会賞を出すというから、めんどくさくて学会を辞めた」
「理工学部でも工学部でもない(経済学部所属??)から、同業者と付き合わなくて済む」
. 何を思い込んでいるのか知らないが私達は顕微鏡屋ではないし、
. 今は国立研究所ってのもないんだが。
で、極めつけが、「科研費なんてくだらない物に応募したことがない」
科研費をとったことがないのを威張る人はたまにいるのだが、
. (私の研究は進みすぎていて理解されない、という若手研究員は結構いる。
. で、1,2%は本当に進みすぎなので、後に大化けする。)
定年過ぎて、科研費を取ったことがない事を威張れる人を見たことはない。
. (巨大プロジェクトに巻き込まれて、自分の科研費を取る暇がなかった、と“言う”人はいる。
. それが本当の場合は、プロジェクトメンバーとして検索に引っかかる。)
訪問先の某中堅企業の社員の人がすまなそうにしていたので、
「豪快な方ですね」 (←大人のコメント) と、だけ言っておいたが、
どうしたんだ、あの人。
松本正張の描く大学人のようである。実際にいるんだな~
さんと、同世代くらいだろうけど、ああいう美学のない人とは付き合いたくないな。